ピンクのユリ(お花のショートストーリー)
「わーすてき。生花もいいわね。ありがとう。」
先日、お母さんの一周忌用の供花のアレンジメントを抱えて、お客様がお店を出て行った。
私はお花屋さんでアルバイトをしている。お花屋さんのお仕事はとても面白い。お花が好きなこともあるが、このお客様はどんなお花なら喜んでくださるか、お話しながら考えるのが好きだ。
このお客様は中国の方だった。中国の供花はとにかく、5色などの奇数色で、花も奇数本でというオーダーだった。お客様のお母さんは紫と黄色がお好きとのことだった。
私はユリを白にしようかピンクにしようか迷った。
今日のお店に入っているユリの色合いが、味わいがあるピンク色で素敵だなと思っていたので、お客様に今日はピンクをご提案した。
「私の家のお仏壇にはね、ピンクのユリの造花が飾られているの。ユリはカッコいいわね。」
とお客様もご了承くださった。
「そうですか。お母さんが喜んでくれるといいですね。ただ、造花もいいけど、生のユリもいいですよ。ほら、一輪に4~5個の花がどんどんと咲いていきます。ユリって、咲き始めより完全に開いたユリのほうが香りが強いんです。つぼみが段々と大きくなって開いていく変化が毎日楽しみだったり、香りの変化も面白いなって感じるんですよ。たまには生花もいいもんですよ。」
私はユリの沢山入ったバケツから、お花の開き具合の良いものを選びながら答えた。
「そうですか。」
お客様はそう答えた。
10日程度が経ち、またそのお客様がご来店してくださった。
「ユリ、とてもいいですね。生の花は枯れちゃうからあまり買いたいと思わなかったけど、買ってみるととてもいいね。毎日少しずつ咲いていくのがとても面白かったわ。香りも良かった。きっとお母さんもそう思っていると思う。かわいく思えてきたわ。」
お客様の笑顔が嬉しかった。
お花には本当に癒されますね。
またのご来店をお待ちしています。
お写真のユリは、新潟県産(JAにいがた岩船 荒川産です。)
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